A Treatise on the Astrolabe – “アストロラーベの論文” 和訳

翻訳にあたって

こちらはジェフリーチョーサーが彼の息子ルイスの為に著したといわれるアストロラーベ指南論文「A Treatise on the Astrolabe」の日本語訳となります。

資料としては、

同名の中英語版書籍https://www.amazon.co.jp/Treatise-Astrolabe-Geoffrey-Chaucer/dp/1517564484

wikipediaのページhttps://en.wikipedia.org/wiki/A_Treatise_on_the_Astrolabe

a872年にWalter William Skeatが編集の書籍https://archive.org/details/atreatiseonastr00skeagoog

原文は以上を参照とし使用させて頂いています。

 

特にwilipedia上からw.w Skeatのアストロラーベのイラストを取得し多くの加工を行い二次使用していますが、こちらはwikipediaコモンズの「自由文化作品」の定義に準拠したものとしてます。

本書は5部構成となっておりますが、実際には2部までしか残っておらず、3部以降は喪失もしくは書かれていないままという見解が濃厚です。

なので、現在内容が入手できる2部までとなります。

2部については46項まであるのですが、ジェフリーチョーサー自身が書き記した物ではなく後世に「マーシャーアッラー<Mashallah Ibn-Aṯarī」というイスラムの占星術師の書いたアストロラーベ論文を元に追記しているということなので、一旦翻訳は保留します。*チョーサーもマーシャアッラーの文献のラテン語版を基にしている

現代英語に刷新されたテキストも最中に見つけ途中からこちらも参照していましたが、不明な部分もあるので中英語版の原文と照らしたり、古い天文学/占星術資料の智慧も借りながら編纂しています。あくまでも解説書として現代でも伝わる情報としてまとめたかったので、現代の一般論や実際にアストロラーベ本体をつかって確かめながら原文通りではない文章に組み立て直したり簡略化した箇所があります。

本来は図解だったようですが、手にはいる原文は文章のみだったので “W.W Skeatが本書で扱ったであろうアストロラーべのイラストを使用し図解という形に編集します。

なお、この図のアストロラーベの画像から、画面上で操作できるシミュレータも用意したので、第二部を読む際に実際に使ってみてください。

Oxford astrolabe simulation

..前書き部分にはジェフリーチョーサーの立場として

「ここで、私自身のみの力でこの論文を作り出したとは思わないで頂きたい。私は古い天文学者ないし占星術師の知識を編纂し、解りやすい言語で翻訳しているにすぎない。

故に、私は先人に敬意を払う」

But considere wel, that I ne usurpe nat to have founde this werk of my labour of olde Astologiens, and have hit translated in myn English only for thy doctrine; and with this swerd shal I sleen envye.g 原文まま

と訳した箇所がありますが、Φ phiにも全く同じことが言えます。 少しでも私たちがチョーサーと、かつて彼が敬意を表した先人たちの叡智の灯を永劫守る力になれたら幸いです。


Treatise on the Astrolabe 

    • Geoffrey Chaucer (1340-1400)

まえがき

我が息子ルイスへ。

*ジェフリーチョーサーには「ルイス」という名前の息子は確認されておらず、誰のことを指すのが議論がある

私は、君が科学、数学を十分に理解する素質を持つことを根拠に、アストロラーべについて学びたいという君の強い願いを認めよう。

「友の願を叶える誰もがまた彼の友人である」とある哲学者は言った。

故に、君に贈ったオックスフォードに合わせて作られた、特別なアストロラーベを基にしたこの論文で、この機器のいくらかの知識を与える。

“The works of Geoffrey Chaucer : now newly imprinted(1896年出版)”中「Treatise on the Astrolabe 」の冒頭ウィリアムモリスによる挿絵
この書籍の全頁はinternet archive内で閲覧できます

「いくらかの知識」と言う理由は、3つある。

この地域にはアストロラーベというすばらしい器機について完全な知識を持ったものはいないから、

*ジェフリー・チョーサーはオックスフォードの人物

また、私がこれまで触れてきたアストロラーベの論文には誤りがある上に、それらの資料はまだ子どもの君には難解であるからである。

・・・・

この論文は五部構成になっており、我々の母国語である解りやすい英語で書かれている。ラテン語の理解が不十分な君でも理解できることだろう。

…世界にはあらゆる言語がある。が、言語に貴賎はない。アラブの人がアラビア語を使うように、ラテンの人がラテン語を使って学び、考え、話していたというだけのことだ。どのような言語で書かれていようと真実は同じである。あらゆる知識はどのような言葉で学ぼうとも「すべての道はローマに通ずる」という諺の通り、同じ真実にたどり着くのものだ。

—ここで私は、この小さな論文には子供にも解りやすいよう複雑な表現は避け、要点を繰り返す文章になることを、この資料に触れるすべての人にお許し願いたい。

ルイスよ、私はこの英語論文がかつて研究してきたラテン語アストロラーベの論文と同じくらいの知識を与えることができれば満足である。

*ここでの「英語」とは中英語【middle English】のこと

我らの王を、この言語を、この言語を使うすべての人々を…彼らの道に神の加護があらんことを。

*当時中英語で書かれた専門的な書物はなく、日常に使用する言語で学ぶ大切さを表現したと思われる。

しかし、私自身のみの力でこの論文を作り出したとは思わないで頂きたい。私は古い天文学者ないし占星術師の知識を編纂し、解りやすい言語で翻訳しているにすぎない。

故に、私は先人に敬意を払う

・・・・・

 

第一部にはアストロラーベの構造を記すので、君の手にする機器により親しむことができるだろう。

第二部では手に収まるほど小型なこのアストロラーベで出来る従来の使用法をまなぶことができる。ただし、天文学者や占星術師が精密な計算をするには小さすぎる。

第三部では、牧師であるJ. somes , N. Lenneによるカレンダーを参照に、アストロラーべ用に固定された緯度経度の様々な表、太陽赤緯表、都市や町の経度の表、緯度による時計設定のための表、などの計算に必要な資料で構成されている。*原本文無し

第四部は天体の動きにまつわる理論である。特に、4項では暦の中で毎日の毎時間ごとの月の動きと十二宮に対応した表が含まれている。この表さえあればどんな経度でも月が上昇するときの宮を知ることができる。惑星も同様である*原本文無し

第五部では学問の一分野として、一般的な占星術理論の多くを体系的におしえよう。ここには、オックスフォードの経度に基づいたハウス、ディグニティ(占星術用語で品位)の表などが含まれている。もし敬虔な心を持って取り組むならば、占星術の知識を私以上に身につけられることだろう。*原本文無し

 

・・・・・

第一部 アストロラーベの構造


1-1.

アストロラーベには対象物の高さを測定するときのためにつり下げるリング(右手の親指を置くリング)備わっている。

今後「対象物の高さ」については、「高度」という用語を使用するので気をつけよう。


1-2.

このリングは、アストロラーベ本体最上部に備わっているので、ここを持つことにより常に真っ直ぐぶら下がる。


1-3.

アストロラーベの土台となる最も厚い盤(マザー)は、様々な緯度の為の薄いプレート(ティムパン)と、透かし模様の形状の盤(リート)を収める盆のようなプレートである。

図1,w.w Skeatのイラストより。本書では図のアストロラーベを元に書いたと思われる
以後、かれのイラストを参照に使用してゆきます

出典はwikipediaより


1-4.

アストロラーベのマザーの裏側は、本体上部から底部まで続くラインで分けられる。

リングから中央の穴までのラインは「南線」または「子午線」と呼ばれている。

残りの下半分は、「北線」または「深夜線」と呼ばれる。


1-5.

先述”1-4” のラインを直角に横切る同じ長さの線は、端の十字マークから中央の穴の部分までを「東線」または「東方線」と呼ぶ。残りの部分は「西線」または「西方線」と呼ぶ。

この主要なラインにより、アストロラーベは4つの部分に分割される。


1-6.

先述”1-4 ,1-5 項”で示した十字マークのある東側はアストロラーベの右と呼び、反対の西側はアストロラーベの左と呼ぶ。これを忘れてはならない。。
きみの右手の親指にリングを置いたとき、左手側はアストロラーベの右となる。
*アストロラーベを人と見立て、向かい合ったときに相手の右手は自分からみて左という風に

これは一般的なルールとして、背面だけではなく表面でも同じことが言える。

先述の通り東線の端には小さな十字マークがあり、それは常に日の出(の角度)を示す。※地平線のこと

※使用項目2-3

図2,4〜6項の通りに分割した様子

1-7.

境界線は十字マークから 天頂の子午線端まで90度で分割されている。残りの三つも同様に分割される。
小さな十字マークのある最外周に数字が刻まれており、その間に5度刻みで分割する為の長いラインが引かれている。

長いラインのひと目盛りは、マイルウェイ(1マイル歩くのにかかる時間=20分)を示す。
一つ内側の小さなひと目盛りは1度刻みで時間にして4分を示す。

図3,

1-8.

※8〜12項は図4を参照してください。

先述 第一部7項からさらに内側には黄道十二宮の名前がそれぞれ降られており、各宮の度数は、宮の上の数字で示される。(30度刻みの目盛り)
こちらも5度刻みの長いラインがある。

黄道12宮において、1度は60分に分割できる。アルカイカシウス(『占星術入門』の著者)が示すように、1分は60秒に分割され、無限に分割可能である。
*黄道における「度」は、黄経のことである。時間の単位の分・秒ではない。
縁の目盛りにおける1度は(時間にして)4分であり、黄道における1度は(黄経)60分であることをよく理解しておくように。


1-9.

次の円は365に区分され、1年365日の日を示す。5日刻みの長いラインがあり、数字が刻まれている。


1-10.

次は一年十二ヶ月の月の名前の円となる。

余談として、月の名前の意味にはいくつかはその特徴に由来し、またいくつかはアラビアやローマの王に由来する。
一ヶ月の長さは月によって異なり、ユリウスカエサルとアウグストゥス帝を満足させるため7月と8月は31日までなど様々な日数と決められた。
1月は31日、2月28日、3月31日、4月30日、5月31日、6月30日、7月31日、8月31日、9月30日、10月31日、11月30日、12月31日と定義される。

ユリウスカエサルは2月から2日奪い、7月と8月に一日づつ加えたとされる。

*以上のような事実があったかどうかは実際不明

1-11.

次にカレンダーの聖なる日(聖人記念日)の名が刻まれ、内側には対応するアルファベット(サンデーレター)が刻まれている。

1-12 .

さらに内側には、先述1-5で説明した東西のラインの下に2つの正方形があり、その2辺には多くの用途に使われる12等分の目盛りがある。
*この正方形はシャドウスクエアとも呼ばれる。

垂直方向に刻まれた目盛りはUmbra Versa(アンブラ・バーサ)、水平方向に刻まれた目盛りはUmbra Recta(アンブラ・レクタ)またはUmbra Extensa(アンブラ・エクステンサ)と呼ばれている。

図4 1-8〜1-12項の説明を色分けしてます


1-13.

また、アストロラーベ裏面には中心にアリダートと呼ばれる幅の広い棒が取り付けられる。

アリダートの両端には、日中には太陽光を受け、夜間には星を観測する為の大小2つの穴の開いたプレート(照準器)が備わっている。

図5


1-14.

中心の穴を通る大きなピンにより、アリダート/ルール及び表側のティムパンとリートが取り付けられる。

ピンは、ホースと呼ばれるくさびで固定される。

このピンは、アストロラーベの北極となる。

図6


1-15.

アストロラーベの表側もまた、裏面と同様に東から西へ、北から南への線で4分割されている。

1-16.

表側にも、裏面と同様に360度の目盛りが刻まれている。この目盛りは赤道と同心であり、次に説明するティムパンと同様に分割されている。

また、目盛りは1日24時間を示す小さな十字マークと23のアルファベットで区切られている。先に述べたように、5度ごとの区切りは20分、5度の区切り3目盛りで1時間、1度は4分である。そして、くどいようだが、1分は60秒である。注意されたい。

図7

1-17.

リートの下にあるティムパンには、3つの主要な円が刻まれている。

このうち最小の円は、蟹座の始まりが通る円と一致する為circle of Cancer(蟹座の円:北回帰線)という。

蟹座の始まりは、太陽が最も北にある日であり、即ち夏至である。この日、太陽は北回帰線上を通る。プトレマイオス(古代ギリシャの天文学者)は、蟹座及び山羊座の赤緯(天の赤道と黄道との角度)を23度50分としている。蟹座の始まりを起点に、太陽はこの線から離れ反対側へ戻り始めるため、「回帰線」と呼ばれる。*現代では北回帰線は23度26分

3つのうち間の円は”Equinoctial(昼夜平分時:赤道)”と呼ばれ、牡羊座および天秤座の始まりが通る円と一致する。以前天球儀で示したように、この円は真東から真西へと向かう。この円に太陽があるとき、世界のどこでも昼と夜の長さが等しくなるため、「日の計量器」”Equator(赤道)”とも呼ばれる。これにより、牡羊座の始まりは春分、天秤座の始まりは秋分という。

アスロラーベ上において、赤道の円の内側が北、外側が南となる。南北の緯度を忘れないように。


赤道は『ファーストムーバー(恒星球)のガードル』または『Primum Mobile』とも呼ばれる。恒星球とは、『エイトスフィア』のうち最初のもの(最も外側のもの)で、東から西へ回転するものである。恒星球、すなわち天球を両極から同じ距離で2等分する為、ファーストムーバーのガードルと言われる。

w.w skeatのイラストの一部。一番外側がファーストムーバー(恒星球)のガードル

*天動説における説明である


-ティムパン、三つの主要な円の説明に戻ります-

3つのうち最大の円は、山羊座の始まりが通る円と一致し”Circle of Capricorn”(山羊座の円:南回帰線)という。この日は太陽が最も南にあり、冬至と呼ばれる。

太陽は山羊座の始まりを起点にこの線から反対側へ戻り始めるため、「回帰線」という。

図7 赤道と回帰線

1-18.

ティムパンには、”Almicanteras”(アルムカンター:高度を表す線)と呼ばれる円も描かれている。中心は完全な円で、徐々に楕円になり、欠けてゆく。最も小さな円の中心を天頂と呼ぶ。最も外側の円は、天球を見える側と見えない側の2つに分ける線であり、地球の地と天を分ける線、水平線を表す。

アルムカンターは2度刻みで描かれるが、アストロラーベのサイズによっては3度刻みなどの異なるラインで描かれる場合もある。

天頂は、君のいる地点の真上に想定され、地平線の正確な極となる。



※使用項目2ー3


1-19.

天頂を中心として広がり、アルムカンターと直角に交差する曲線はアジムツ(方位角)と呼ばれ、アストロラーベの水平線(アルムカンターの最も外側の円)を24分割している。この方位角により、太陽や星の時角などを求めることができる。

*24分割とは限らない。


1-20.

アストロラーベの水平線の下には、北回帰線から始まる12等分の曲線が描かれる。これは惑星時間(不定時法の時間)を示す。


図8※解説のためのイラストなので線の本数や間隔などがおかしいですすが部位そのものは上記の通り

1-21.

透かし模様の形状の盤であるリートは、自由に回転させることができる。リートには、黄道帯及び伝統的な黄道12宮と(器機が正しく作られている場合は)緯度及び経度に応じた代表的な星(固定星)が刻まれている。

星の名前は余白に刻まれており、星の位置は名前の近くの尖った部分の先端となる。黄道帯の中の星はすべて北の星であり北東から昇る。外側の星は南の星であり基本的には南東から昇ることに注意せよ。

図8

しかし、南の星の全てが真東より南から昇る訳ではない。アルデバランやペルセウス座のベータ星などである。

一般に、北の星はその経度に従って早く昇り、南の星は平均よりゆっくり上昇する後から昇る。アストロラーベ上でも同じである。

星の経度は、太陽と月が直線上にあるときに日食や月食が起こる黄道の位置から測定される。これについては後述する。

アストロラーベ上の黄道は、黄道12宮の外側の縁、目盛が刻まれたところである。

黄道12宮は、空の12宮が12度の幅を持つため幅のある円形となっているが、ほかの円はすべて幅のない線で表される。


図9

太陽の通り道である黄道にも幅はなく、黄道12宮の幅の真ん中にあるものとする。したがって、黄道には南北6度ずつの黄道帯が存在する。

*現在、黄道帯は黄道から各8度づつ、計16度とされる

黄道帯は12星座を表す12の部分に分けられ、各星座には2度刻みの目盛りがある。これは1度が60分の、角度の目盛りである。

12星座には幻獣の名が与えられており、黄道12宮は「獣の円」とも呼ばれる。これは、太陽がその宮に入ると対応する幻獣の特徴を得るから、あるいはその宮の位置の星が幻獣の形に並んでいるから、または惑星が各宮にあるときに宮に対応する幻獣のような影響を与えるからとも言われる。

暑い惑星が暑い宮に入るとその熱をより高め、冷たい惑星が暑い宮に入ればその冷たさは弱められる。

このように、12宮にはそれぞれ乾燥・湿潤、活発・停滞などの特徴があり、惑星にその影響を与える。

また、12宮は人体の12の部分とも対応している。

頭は牡羊座、首と喉は牡牛座、肩と両腕は双子座、などである。

詳細はこの論文の第5章で説明する。

黄道は『エイトスフィア』の一つであり、赤道と春分点及び秋分点で交差し、北回帰線と夏至点で接し、南回帰線と冬至点で接している。


1-22.

リートの上には、ルールと呼ばれる棒が取り付けられる。ルールは、両端にプレートがないこと以外はアリダードによく似ている。

このルールをは先が細くなっており、これをアストロラーベの縁に合わせ、様々な計算を行う。

図10

1-23.

リートの山羊座の始めの部分にはアルムリと呼ばれる突起がある。

アルムリは山羊座の歯または計算機とも呼ばれ、様々な用途で使用する。

図11


第2部 アストロラーベの使用

■索引

1. 任意の日の太陽の黄経(黄道上の位置・天頂)を調べる
2. 太陽または他の天体の高度を調べる
3. その日の太陽の位置や特定の星の位置から現在の時刻を調べる。また、アセンダントを調べる。
4. アセンダントに関する注意
5. 太陽高度がアルムカンターのラインの間にある場合
6. 夜明け前と日没後の『クレプスクルム(トワイライト)』を調べる
7. 日の出から日の入りまでの日の長さ(人工的な日の長さ;暦日)を調べる
8. 不定時法(の「日の長さ」)を定時法(の「日の長さ」)に変換する
9. トワイライト(クレプスクルム;薄明)を含めた一般的な日の長さを求める
10. 不定時法による1時間の長さを知る
11. 定時法による1時間の長さを知る
12. 惑星時間(不定時法)の解説
13. メリディアン高度(太陽の南中高度)を調べる
14. リートを使用して太陽黄経(日付)を調べる興味深い方法
15. (日中の)長さが同じ日を見つける
16. 「同じ長さの日」の結論
17. 固定星ではない(未知の、または既知の)星の座標を求める
18. 固定星の経度を求める
19. どの固定星が、黄道12宮のどの角度と一緒に昇るかを調べる
20. 赤道から黄道帯の赤緯を調べる
21. アストロラーベ(のティムパン)のアルムカンターがどの緯度に設定されているか確認する
22. オックスフォードの緯度と天頂の高度を調べる
23. 北極の高度を測定して緯度を求める
24. 北極の高度を別の方法で測定する
25. 別の方法で緯度を調べる
26. 黄道12宮の上昇について
27. 正円での(赤道上で観測した場合の)宮の上昇を知る
28. すべての地域において、傾いた円(赤道以外の観測地)の宮の上昇を知る
29. 世界を4つに分けるもの、東西南北を知る
30. 惑星の今日の太陽の通り道からの高度(黄緯)を調べる。
31. 太陽が昇ってくる方角(方位角・経度)を知る
32. どの方角に(太陽と惑星の)合(ごう)があるか調べる
33. 太陽の高度から方位角を調べる
34. 月やその他の惑星が黄道からの緯度を持たない時にその経度を調べる。
35. 惑星の動きが順行か逆行かを調べる
36. アストロラーベを使用してハウスを決定する
37. アストロラーベを使用した、別のハウスの決定法
38. あらゆる場所において、子午線を見つける
39. 子午線や経度及び緯度、都市の地域の経度(緯度)の説明
40. 緯度の南北に関わらず、ある惑星がどの黄道12宮と一緒に昇るかを調べる

2-1.

任意の日の太陽の黄経(黄道上の位置)を調べる

裏面のカレンダーから調べたい月日を探し、目盛りにアリダードを合わせる。

アリダードは、その日の太陽の黄経を(黄道12宮の目盛りで)示す。

例)1391年3月12日の黄経を調べる

アストロラーベ裏面のアリダードを、カレンダーの3月12日の目盛りに合わせる。

アリダードは、牡羊座の始めと少しの所を指す。

例)12月13日の黄経を調べる

アリダードを12月13日に合わせる。

アリダードは、山羊座の始めから少しの所を指す。

※使用項目2-3

■第2部索引へ


2-2.

太陽または他の天体の高度を調べる

アストロラーベの裏面が見える向きでリングを右の親指に置き(吊り下げ)、太陽が自分の左に来るように立つ。

太陽の光がアリダードの両端にあるプレートの穴(サイト)の両方を通過するようにアリダードを動かす。

アリダードの先端が小さな十字マークから何度離れているかが太陽高度となる。

(サイトを覗いて観測することによって?※覗いて太陽を見ると眩しい)月や明るい星の高度も同様に調べることができる。

この項は非常に簡単なので例題はないが、よく覚えておくように。

※関連使用項目2-14

■第2部索引へ


2-3.

その日の太陽の位置や特定の星の位置から現在の時刻を調べる。また、アセンダントを調べる。

第2部2項を参照して太陽高度を調べ、午前の場合(太陽が天の東半分にある場合)はアストロラーベの東側のアルムカンター(高度を示す線:第1部18項を参照)、午後の場合は西側から調べた太陽高度に一致するラインを探し、リートを回して黄道12宮にあるその日の太陽の黄経を合わせる。

合わせた点の上を通るようにルールを合わせると、ルールの先が現在時刻を指す。

例)1391年3月12日に時刻を調べる

太陽は天の東半分にあり、アリダードを用いて太陽高度を測定したところ25度30分であった。

アストロラーベを裏返し、東半分のアルムカンターから25度30分を探し、リートを回して今日の太陽の黄経と合わせる。太陽黄経は牡羊座の1度であり(第2部1項参照)、太陽はアストロラーベの右にある(第1部6項参照)。その後、合わせた点を通るようにルールを合わせると、先端は「X」を指した。これは午前9時である。

また、この時に東の地平線(アルムカンターの最も外側の線の東半分)から昇りつつあるのは双子座の20度であった。これがアセンダントである。

このようにして、日中の時刻およびアセンダントが求められる。

 

※この例題はオックスフォードに合わせて作られたアストロラーベで求められている。緯度が異なれば、太陽高度が異なる点に注意。

次に、同じ日の夜に時刻を調べる。

リートにある固定星の中から高度を調べられそうな星を選ぶ。今回は西の空にあるシリウスの高度を調べるのがよさそうだ。

アリダードを用いて測定したところ、高度は18度であった。

リートを回して、シリウスのポインタがアルムカンターの西側18度を指すように合わせる。そして、アストロラーベの西の地平線の下にある今日の太陽の黄経にルールを合わせる。ルールの先端は午後8時から2度のところを指した。(1度=4分なので、時刻は午後8時8分である。)

このとき、東の地平線(アセンダント)は天秤座23度であった。

これで、こんな小さな器機を使って、昼も夜も時間を知り、アセンダントを求めることが出来る。

この方法で注意すべき点は、時刻及びアセンダントを調べるために子午線の近くの天体を使用しないことである。なぜなら、天体が子午線に近づくと、高度は同じアルムカンターに留まるからである。(子午線近くの天体は、高度の変化が少なくなるからである。)持ち運べるくらいの小さなアストロラーベでは正確な観測は難しい。私の経験上、子午線の前後15度以内の天体は使用をさけた方がよい。

※関連項目2ー5
※関連項目2ー11

■第2部索引へ


2-4.

アセンダントに関する注意

アセンダントは生誕であり、選ばれた時間であり、占星術者にとって、非常に大切なものである。したがって、ここで詳しく解説しておく。

アセンダントとは、広い意味では特定の時刻に東の地平線上に上る黄道12星座の角度である。したがって、ある惑星が東の地平線から上る時刻において、その惑星は黄道からの緯度がなく黄道上の位置はその経度に等しい。このとき、ある惑星が『ホロスコープにある』という。ホロスコープはすなわちアセンダントのハウスである。

(占星術に置ける)アセンダントのハウス、即ち第一ハウスあるいはイーストアングルとは、より幅の広いものである。占星術の規則によれば、星座角が東の地平線から上5度以内にある惑星は、アセンダントのハウスにあると見なされる。また、東の地平線から下25度以内にある天体も、アセンダントのハウスにあるとされる(イコールハウスの説明と思われる)。惑星がこの境界の外にある場合は「アセンダントから落ちる」と言われる。

アセンダントのハウスに惑星があることは、幸運も不運も表す。

「幸運なアセンダント」とは、土星や火星、竜の尾(ドラゴンテイル)などの邪悪な惑星がなく、アセンダントに悪い影響を与えるアスペクトにもないときである。

アセンダントに幸運な惑星が入っている場合も、幸運なアセンダントであると言える。

しかしながら、アセンダントの幸運・不運は 、他の要因によっても変化する。ディグニティやよいアセンダントの角度、よい影響を与えるアスペクトにある惑星、惑星の逆行や同じサインにある惑星の影響、悪い影響を与えるアスペクトにある惑星など、様々な影響を調べて初めてアセンダントの幸運・不運がわかると言える。

しかしながら、私はジプシーやペイガンたちの使う占星術に対する十分な知識を持たない。

彼らは12星座をそれぞれ10度ごとに3等分し、それぞれを「デーカン」と呼ぶ。

(*原文では「フェイス」と記されていたが、これは「デーカン」を守護する天体を意味するものなので差し替えた。)

またある人々は、惑星が黄道からの緯度を持っており、惑星が経度を持って上ったときに「ホロスコープにある」という。

■第2部索引へ


2-5.

(第2部3項において)太陽高度がアルムカンターのラインの間にある場合

アルムカンターの間隔は、2度刻み、3度刻み、あるいは1度刻みなど、アストロラーベによって異なる。予め目盛りの間隔を確認しておくように。

さて、太陽高度がアルムカンターのラインの間にある場合、またはアルムカンターのラインが太すぎる場合は、(時刻やアセンダントの決定にずれが生じる可能性が高いため)以下のように操作する。

リートを回して合わせたい太陽高度より上にあるアルムカンターのラインに今日の太陽の黄緯を合わせる。そして、アルムリ(第1部23項を参照)が示す位置に印をつける。

次に、リートを合わせたい太陽高度より下にあるラインに合わせ、アルムリが示す位置にもう一つ印を付ける。

そして、二つの印の間にアルムリが来るようにリートを回す。

これでアルムカンターの2つのラインの間に太陽高度を取ることができる。

その上でルールを太陽高度に合わせることで、より正確な時刻を知ることができる。また、アセンダントもより正確に求めることができる。

■第2部索引へ


2-6.

夜明け前と日没後の『クレプスクルム(トワイライト)』を調べる

(天文薄明;6等星までを肉眼で見分けられる暗さになる前の明るさ)

アルムカンターの西18度に太陽黄経の反対の点をあわせ、ルールを合わせる。

ルールの先は、日の出前のクレプスクルムの時刻を示す。

同様に、アルムカンターの東18度に合わせると、日没後のクレプスクルムの時刻を示す。これは黄昏の終わり、すなわち夜の始まりである。

太陽黄経の反対側の点は天底であり、7つ目の宮にある。

太陽黄経が牡羊座であれば天秤座、牡牛座であれば蠍座、双子座であれば射手座、蟹座であれば山羊座、獅子座であれば水瓶座、乙女座であれば魚座である。

天底にある星座は常に暗い時刻に昇るため、観測することができる。

■第2部索引へ


2-7.

日の出から日の入りまでの日の長さ(人工的な日の長さ;暦日)を調べる

*暦日は、現代では真夜中から次の真夜中までの時間である。

リートを回して、調べたい日の太陽黄経を東の地平線に合わせ、ルールを合わせる。ルールの先端が示す位置に印を付ける。


再びリートを回し、太陽黄経を西の地平線に合わせ、ルールを合わせる。

ルールの先端が示す位置にもう一つ印を付ける。

この2つの印の間(の上半分)がその日の「日の長さ」である。

地平線より下の残り半分が、夜の長さである。

同様にして、固定星が水平線の上にある時間の長さを調べることができる。

しかし、自然な「1日」とは、24時間であり(赤道を24等分したもので)、黄道が赤道と交わる時(春分・秋分)に等しくなる。

*人工的な日の長さ=定時法、自然な一日=不定時法だろうか?

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2-8.

不定時法(の「日の長さ」)を定時法(の「日の長さ」)に変換する

不定時法の「日の長さ」の角度を調べ、15で割る。

 


2-9.

トワイライト(クレプスクルム;薄明)を含めた一般的な日の長さを求める

以前の項目で述べたようにして(第2部6項参照)クレプスクルムの時刻を求め、これを日の長さに含める。

同様に、トワイライトを含まない一般的な夜の長さを求めることができる。


2-10.

不定時法による1時間の長さを知る

不定時法は惑星時間とも呼ばれ、1時間の長さが昼と夜で異なる。昼の一時間が夜の一時間より長いこともあり、またその逆もある。

しかし、同じ日において昼の1時間と夜の1時間の合計は常に昼夜平分時における30度(定時法による2時間)である。

したがって、人工的な日の長さの時間を12で割ったものが、不定時法による昼の1時間の長さである。

そして、不定時法による昼の1時間を30度から引いたものが、夜の1時間である。

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2-11.

定時法による1時間の長さを知る

定時法による1時間、つまり時計の1時間は、アストロラーベにおいて15度の目盛りで刻まれている。これは昼夜を問わず同じである。

(日の出や日の入りなど、知りたい出来事から)どれだけの時間が過ぎたのか、またはどれだけの時間がかかるのかを知りたい場合は、今日の太陽黄経を現在の太陽高度に合わせてルールを合わせ、現在時刻を求めてから(第2部3項参照)ルールとリートを一緒に回し、知りたい出来事に合わせる。ルールが動いた角度が、その出来事までの時間である。

より詳しくは第4章の終わりに説明する。


2-12.

惑星時間(不定時法)の解説

日の出から日没まで、別の言い方では太陽が見えている間は「惑星時間の昼」であり、日没から日の出までが「惑星時間の夜」である。

例)3月13日土曜日になり、太陽が昇ってきたときに、東の地平線は牡羊座の2度より少し小さいところにあることがわかった。

そして、牡羊座2度の天底である天秤座の2度が沈みゆくのを西の地平線に見つけた。

日が昇るとき、天底は常に西の地平線にある。

西の地平線に沈みゆく天底が入る時間が属する惑星のが、その日の惑星である。

そしてすべての1時間はそれぞれ惑星に属する。

最初の1時間に天底がある時間の惑星が、その日の惑星(曜日)の名となる。

太陽が昇るにつれて天底は沈み、惑星も切り替わってゆく。

1時間ごとに天にある順により地球に近い惑星に属し、最下層から最上層へ戻る。

*天動説における惑星の順となる。

毎週土曜日の最初の1時間は、土星に属する。2番目は木星に、3番目は火星に、4番目は太陽に、5番目は金星に、6番目は水星に、7番目は月に属する。そして、8番目は土星、9番目は木星、10番目は火星、11番目は太陽、12番目は金星に属する。

そして土曜日の日が沈む。

夜の12時間になり、最初の1時間は水星である。次は月、そして土星と同様に続く。

次の朝が来る(日が昇る)時、最初の1時間は太陽に属している。

ゆえに、この日は太陽に祝福され、日曜日である。

このようにして、七曜は移ってゆく。

ポルトガル生まれのの宇宙学者Bartolomeu Velho(16世紀)が書いた天動説の図

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2-13.

メリディアン高度(太陽の南中高度)を調べる
リートを回して、調べたい日の太陽黄経を子午線(メリディアンライン)に合わせる。

このときのアルムカンターの値が、その日の太陽の最高高度である太陽南中高度である。

同様に、固定星が最大でどの高度まで昇るのかを調べることができる。星も太陽と同じく、子午線を通過すると降下し始める。


2-14.

リートを使用して太陽黄経(日付)を調べる興味深い方法

その日の太陽が一番高い時に(太陽が南中したとき)、裏面とアリダードを用いて太陽高度を測定する。(第2部2項参照)

アストロラーベを裏返し、子午線上の測定した高度に印を付ける。

リートを回し、印と黄道12宮が重なる点を探すと、異なる宮にある2カ所が見つかる。(夏至;蟹座の始め~冬至;射手座の終わりの間に1つ、冬至;山羊座の始め~夏至;双子座の終わりの間に1つ)季節がわかっていれば、どちらか今日を示すかわかるはずである。

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2-15.

(日中の)長さが同じ日を見つける

蟹座の始めと山羊座の始めから何度離れているか調べ、同じだけ離れている所を探す。この2つの日の日中の長さは同じである。同様に、同じだけ離れた2つの月の日の長さは、だいたい同じである。

また、ある一日と、赤道(牡羊座の始めと天秤座の始め)を挟んで反対側にある一日では、一方の昼の長さがもう一方の夜の長さに等しくなる。逆もまた同様である。

*日付はアストロラーベ裏面のカレンダーで確認することができる。


2-16.

「同じ長さの日」の結論 ※関連項目2-15

黄道帯は2つの半円に分割される。一つは山羊座の始めから蟹座の始めまでである。もう一つは蟹座の始めから山羊座の始めまでである。

山羊座の始めは冬の太陽の最低点であり、蟹座の始めは夏の太陽の最高点である。したがって、この2つの点から同じ角度にある黄道12宮の任意の二つの点(2つの日)は、北半分か南半分かを問わず、同じ赤緯を持ち、昼の長さおよび夜の長さが等しい。影の長さや南中高度も同じである。

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2-17.

固定星ではない(未知の、または既知の)星の黄道座標を求める

求めたい星が子午線より東で、なるべく子午線の近くにあるときに、高度を測定して記録する。すぐに、その星からなるべく近くにある(近い方位角にある)固定星を観測して、そのアセンダントを記録する。

しばらくして、求めたい星が子午線を超えて下降し、先ほどの記録と同じ高度になった時、再び先ほどと同じ固定星のアセンダントを観測し、記録する。

観測が終わったら、記録した2つのアセンダントの間を東の地平線に合わせ、子午線上にくる黄道12宮の角度を調べる。黄道の角度が、天球における経度である。そして、牡羊座の始め(0度)から魚座の終わり(360度)までの数値に変換する。これが調べたい星のその時の経度である。

(黄道からの)緯度を求めるには、測定した高度の値が黄道から北の極あるいは南の極に向かってどれくらい離れているか計算する。

太陽や固定星の場合も同様である。

(赤道からの)緯度を求める場合、惑星の場合には予め黄道からの緯度を求めておく。

赤道からの緯度は、すべての天体が北または南の高度(北緯または南緯)を持っている。

そして、太陽以外の天体は黄道からの緯度、つまり黄道より北または南の高度を持っている。

太陽以外の惑星の黄道からの緯度は変化する。緯度が北の場合は太陽より北に、南の場合は太陽より南に沈む。

 


2-18.

固定星の経度を求める

星のポインタを子午線上に合わせる。このとき子午線上にある黄道12宮の角度を調べる。これが、この星の経度である。

これは、星が地平線から昇る時の角度(一緒に昇る宮)とは異なる。

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2-19.

どの固定星が、黄道12宮のどの角度と一緒に昇るかを調べる(宮が移る場合でも)

東の地平線に星のポインタを合わせ、このとき東の地平線にある黄道12宮の角度を調べる。この角度は星と一緒に昇る。

奇妙なことに、昇るにつれて星の宮は変わってゆく。これは、星の緯度が赤道の南北にある(星は赤道からの緯度で固定されている)為である。

しかし、惑星の緯度は通常黄道から測定される。これは、すべての惑星が黄道の近くにあり、黄道帯からわずかに出る程度までしか角度(緯度)を変えないからである。

天体の上昇について、これをよく覚えておくように。

月も星も、傾いた地平線(観測地が緯度を持つ場合の地平線・観測地が赤道上以外)から昇るときには、黄道からの経度の通りの角度から昇る訳ではない。黄道からの経度を持たない場合ででも同様である。それでも、(赤道上で観測すれば?)惑星は黄道と同一線上にある。

2-20.

黄道帯の赤緯を調べる

調べたい宮(黄道帯の角度)を子午線に合わせ、アルムカンターの高度を測定し、その高度に印を付ける。

リートを回し、牡羊座または天秤座の始め(春分点または秋分点)を子午線に合わせ、再び高度を測定する。

この2つの高度の差が赤道からの緯度であり、赤緯である。これが赤道より北にあれば北緯、南にあれば南緯である。

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2-21.

アストロラーベ(のティムパン)のアルムカンターが地上のどの緯度に設定されているか確認する

子午線上において、赤道から天頂まで、または天の北極から北の地平線までの度数を確認する。

それが設定された緯度である。


2-22.

オックスフォードの緯度と天頂の高度を確認する

牡羊座及び天秤座の始めである(天の)赤道から地平線までの角度は(天の)北極から天頂までの角度と同じである。また、地平線から北極までの高度は、天頂から赤道までの高度と等しくなる。
これをオックスフォードの緯度で説明する。

オックスフォードの地平線から北極までの高度は51度50分であり、北極から天頂までの角度は38度10分である。
赤道から天頂までは51度50分、赤道から南の地平線までは38度10分である。

地平線から天頂までは常に90度であり、赤道から北極までも90度であることを忘れないように。

その場所の緯度は、その場所における天頂と赤道の角度である。

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2-23.

(天の)北極の高度を測定して(観測値の)緯度を求める

冬の夜、空が澄んで星が輝くときに、北極の真下にある動かない星を探し、Aとする。*北極星のことであろう。

Aの真下で北極の真下にある星を探し、Fとする。FはAが極の真下にあることを証明する為だけに使用する。

Aの水平線からの高度を測定し、記録する。

FがAの周りを回転しながら上昇し、Aの真上に来た時(Aと北極をつないだ線の上にFが来た時)、再びAの高度を測定する。

1回目の測定値から2回目の測定値を引いて、その半分を2回目の測定値に加える。*2回の測定値の平均を取る。

この値が北極の高度であり、即ち観測地の緯度である。

どんなときでも、ある地点からの北極の高度とその地点の緯度は等しい。

(2章22項参照)

*1回目と2回目の測定の間は12時間。1回目の測定は冬の夜の早いうちに行わないと、2回目の測定ができなくなる。

例)夜が来た時、星Aの高度は56度であった。

そして夜明け近くには48度であった。

56ー48=8であるので、差の半分の4を48に加えると52度である。よって、北極の高度および観測点の経度は52度である。


この測定を正確に行う為には、頭より高い位置から垂直に下がる線(照準となる線)が必要である。
この線が北極と観測者の目の間にあるようにすると、AとFが直線上にあるときが確認できる。
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2-24.

北極の高度を別の方法で測定する

地平線の下に沈まない星を一つ選び、その最大の高度と最低の高度を測定する。
この二つの値の平均が北極の高度である。


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2-25.

別の方法で緯度を調べる

ある場所の緯度は、北緯でも南緯でもその場所における天頂と赤道との角度であり、アストロラーベの子午線上の(赤道から天頂までの)測定値である。これは、その場所における地平線から極までの角度と同じである。

反対の極の低さ、あるいは北の地平線からの南極の角度も同じである。

この場所の緯度を知りたいときは、牡羊座の始めまたは天秤座の始め(春分・秋分)に、太陽が南中したときの高度を測定する。

このとき、太陽は赤道上にあるので、測定した高度を90から引いた残りがその場所の緯度である。

例)この日(春分・秋分の日)、太陽南中高度が38度であった。90度から引いた残りは、52度である。

 

この測定には誤差があるが、例として挙げる。
オックスフォードの経度はもう数分小さい。(*およそ51度45分である。)

春分や秋分が遠い日にある場合は、黄道12宮のどの日であるかを確認してから(2章1項参照)太陽の南中高度を測定し、その角度の赤緯を考慮して計算する。(2章20項参照)

宮の角度が赤道より北にある場合は、その赤緯を差し引く。
宮の角度が南にある場合は、その赤緯を測定した太陽高度に加える。

例)獅子座10度の日、

太陽の南中高度は56度であった。


そして、獅子座10度の赤緯は18度弱で、赤道の北であった。
56度から18度弱を引くと、38度強である。

(もし、今日の赤緯が南だった時は、赤緯の値を測定した太陽高度に加えればよい。)

これが、この地点における春分・秋分点での太陽南中高度である。

そして、これを90から引いた51度50分が地平線から極までの角度であり、この地点の緯度である。

また、固定星の赤道からの最高角度(緯度)は、固定星から赤道までの線の角度である。

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2-26.

黄道12宮の上昇について

*ここまでは地平座標での観測方法だった。
(自分の真上が天頂で、地平座標が基準)

ソリッドスフィア(天球座標すなわち赤道座標)のすばらしい点は、「正円」(赤道と直角になる円)と「傾いた円」(赤道と斜めに交わる円)によって多様な宮の上昇が様々な場所においてはっきりとわかることである。

これらの著者は宮が上がるときに黄道帯の角度よりも赤道の角度が大きい時、「正しい上昇」と呼び、宮が上がるとき黄道帯の角度が赤道の角度より大きい場合は「斜めの上昇」と呼ぶ。

*「これらの著者」は、プトレマイオス

さらに、天頂に赤道があり地平線に極がある場所(緯度0度・赤道の上)では、正円と正しい地平線が存在する。

ここでは、昼と夜の長さは常に同じであり、年に2回、太陽が真上を通過する。そして、年に2回の夏と年に2回の冬がある。

そして、図で示すように、この緯度でのアストロラーベのアルムカンターは直線である。

*アルムカンターは直線にはならない。直線になるのは、アルムカンターの一番下の地平線のみである。


正円での上昇を知ることによって、占星術師はテーブル(天体表)や器機(アストロラーベなど)を用いて、12宮の上昇するあらゆる角度や時間を正確に求めることができる。

オリソン・レクタムと呼ばれる正しい地平線は、赤道を正しい角度で(直角に)分割する。

斜めの水平線は、極が地平線より上にある場合(赤道上以外のすべての点)であり、赤道と斜めに交差する。


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2-27.

正円での(赤道上で観測した場合の)宮の上昇を知る

正円での上昇を知りたい宮の始めを子午線に合わせる。

そして、アルムリが示す位置に印を付ける。リートを西側に回し、その宮の終わりが子午線に来るように合わせる。アルムリが示す位置にもう一つ印を付ける。

この2つの点の間の角度が、正円で昇る宮の上昇の角度(上昇にかかる時間)である。

これは12宮のどれでも行うことができる。


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2-28.

すべての地域において、傾いた円(赤道以外の観測地)の宮の上昇を知る

傾いた円の上昇を知りたい宮の始めを東の地平線に合わせる。そして、アルムリが示す位置に印を付ける。リートを回して、その宮の終わりを東の地平線に合わせ、アルムリが示す位置にもう一つ印を付ける。

この2つの点の間の角度が、傾いた円で昇る宮の上昇の角度(上昇にかかる時間)である。

12宮のうち、牡羊座の始めから乙女座の終わりまでは赤道の北にあり、東と北の間の地平線から昇る。そして、天秤座の始めから魚座の終わりまでは赤道の南にあり、東と南の間の地平線から昇る。

また、山羊座の始めから双子座の終わりまでは、(*オックスフォードの緯度においては)地平線から2時間以内に昇りきる。これらの宮は地平線から斜めに昇るため「うねった宮」「曲がった宮」と呼ばれる。

「曲がった宮」に付き従って、正しい上昇がやってくる。

蟹座の始めから蠍座の終わりまでは、正しく昇る。

これらの宮はまっすぐに昇るため、「至高宮」と呼ばれる。

至高宮は(*オックスフォードの緯度においては)昇りきるまで2時間以上かかる。

双子座と蟹座、牡牛座と獅子座、牡羊座と乙女座、魚座と天秤座、水瓶座と蠍座、山羊座と射手座は、山羊座の始めから同じだけ離れており、同じ角度を持つ。

 


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2-29.

世界を4つに分けるもの、東西南北を知る

任意の時刻に太陽の高度を測定し、高度と太陽の方角(東か西か)を記録する。

太陽高度から時刻を求める時と同じように、太陽が東にある場合は東側、午後の場合は西側のアルムカンターから調べた太陽高度に一致するラインを探し、リートを回して黄道12宮にあるその日の太陽の黄経を合わせる。

ルールを合わせ、ルールの先と子午線の間の角度を記録する。

アストロラーベを裏返し、先ほど記録したルールと子午線の間の角度にアリダードを合わせる。

アストロラーベを両手で注意深くしっかりと持ち、(アリダードの角度が変わらないように)アストロラーベを回して、アリダードの2つの穴に太陽光が通るようにする(本体ごと、太陽高度に合わせる)。

そのままの角度で、慎重にアストロラーベを平らなところに置く(水平にする)。

すると、アストロラーベの子午線が南、東の地平線が東、西の地平線が西、北線が北を示す。

優しく慎重に操作することによって、空の4つの方角を知ることができる。


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2-30

.惑星の今日の太陽の通り道からの高度(黄緯)を調べる。

惑星が子午線にあるとき(南中した時)の高度を調べる。

その日の太陽南中高度と同じであれば、惑星は黄道上にあり、緯度を持たない。(0度である。)

惑星の高度が太陽よりも高いとき、惑星はアルムカンターで示された太陽南中高度との差の分)だけ黄道今日の太陽の通り道より北にある。

そして、惑星の高度が太陽よりも低い場合は、惑星はアルムカンターで示された太陽南中高度との差の分)だけ今日の太陽の通り道より南にある。

これはどの日においても調べられるが、結果はその観測日だけのものであり、観測日以外にどうなるかはわからない。

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2-31.

太陽が昇ってくる方角(方位角・経度)を知る

まず、太陽が常に真東から昇る訳ではないことを理解するように。

時には北東、時には南東から昇る。

実際には、太陽が真東から昇るのは牡羊座(春分)と天秤座(秋分)だけである。

アストロラーベの地平線は、24本の方位角(第1部19項参照)で24分割され、24の方位を示している。*時角を知るため

ちなみに、船乗りたちは32方位を使用する。*風向きを知るため

どの方位角から太陽が昇るかが、太陽の昇る方角である。

アストロラーベは、東から西への線と、南から北への線で分けられている。

方位角は東から南へと細かく分けられ、最初のラインは東線(赤道と東の地平線が接する点から始まるライン)である。そして、西から北を通って東線へ戻る。

このようにして、星が昇る方角も確認できるであろう。

 

※天空の城ラピュタを見たことあれば以下の場面で考え方がつかめると思います

 

ほとんど真東だね飛行石の光が指したのは。…間違いないだろうね?

 

 

私のいた塔から、日の出が見えました。今は、最後の草刈りの季節だから…日の出は、真東より、ちょっと南へ動いています。光は、日の出た丘のひだりはしを指したから…

 

いい答えだ。

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2-32.

どの方角に(太陽と月の)合(ごう)があるか調べる

*合;2つの惑星が同じ角度にあること。

聖典(天体暦など)を見て、合より前の正午から合までの時間を調べる。

*合が午前中の場合は、前日の正午からの時間となる。

アストロラーベ表の外側の目盛りで、調べた時間に印を付ける。

ルールをリートの黄道12宮の今日の位置に合わせ、ルールとリートを一緒に回して、先ほどの印に合わせる。

このとき太陽がある(黄道とルールが重なる点の)方位角が、合のある方角である。


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2-33.

太陽の高度から方位角を調べる

太陽の高度を測定し、(リートとルールを使って)方位角を確認する。

(2章3項参照;同様に操作し方位角の目盛りを読む)

同様に、星の方位角を調べることも出来るであろう。

これは、星が東西南北のどの方向にあっても可能である。
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2-34.

月やその他の惑星が黄道からの緯度を持たない時にその経度を調べる。

月の高度を測定し、アルムカンターの適切な側(東西のうち、月がある方角)のその高度に印を付ける。

次に、子午線の同じ側にある固定星の高度を素早く測定し、

リートを回してその星を測定した高度に合わせる。

このとき、先ほど印を付けた月の高度が、黄道12宮のどの角度であるか調べる。

この点の方位角が、観測時の月の経度である。

リートの固定星が正確に作られていれば、この結果は正確である。

一般的なアストロラーベの論文では、月が緯度を持つか及び固定星と月が同じ方角にあるかを考慮しない。

この方法は、日中に見える月の経度を計測する場合にも使用できる。

その場合には、固定星のかわりに太陽を使用する。
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2-35.

惑星の動きが順行か逆行かを調べる

惑星の高度を測定し、値を書き留める。

素早く固定星の高度を測定し、こちらも書き留める。

惑星の動く方向を知る為に3~4日待って、固定星が前回の測定と同じ高度にあるときに再び惑星の高度を測定し、値を書き留める。

惑星がアストロラーベの右(東半分)にある時、2度目の高度が1度目の高度より小さい場合は、惑星は順行している。同条件で西にある時は、逆行している。

そして、惑星が東半分にある時、2度目の高度が1度目より大きい場合は逆行であり、同条件で西半分にある場合は順行である。

ただし、月の場合はこの逆となる。月は周天円を他の惑星とは反対向きに移動するからである。
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2-36.

アストロラーベを使用してハウスを決定する

(アセンダントを測定し、第1ハウスの始まりとする。【アセンダントの調べ方は第2部3項】)

*ハウスの始まり=カスプ

※アセンダントにおける夜の不定時刻を設定・分割する

不定時法の(夜の)8番目の終わりに、アセンダントを設定する。

第2ハウスの始まりは、深夜線である。

アセンダントを不定時法の10番目の終わりに移動し、第3ハウスの始まりを深夜線とする。

アセンダントを本来あった場所、東の地平線に合わせ、深夜線を第4ハウスの始めとする。

アセンダントの天底(反対の点)を、不定時法の2番目の終わりに合わせる。

第5ハウスの始めはこのときの深夜線である。

アセンダントの天底を不定時法の4番目の終わりに合わせ、深夜線を第6ハウスの始まりとする。

第7ハウスの始まりはアセンダントの天底であり、第8ハウスの始まりは第2ハウスの天底である。同様に、9は3の、10は4の、11は5の、12は6の天底である。

*ハウスの決定には様々なシステムがある。
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2-37.

アストロラーベを使用した、別のハウスの決定法

アセンダントを測定し、4つの点を取る。

アセンダントの点が、第1ハウスの始まりである。

アセンダントの天底、すなわち西の地平線が、第7ハウスの始まりである。

子午線が、第10ハウスの始まりである。

そして、深夜線が第4ハウスの始まりである。

ルールをアセンダントに合わせ、ルールの先と子午線との間の角度を測定する。

この角度を3で割り、アセンダントと子午線の間を3等分する。

3等分した角度にルールを合わせ、黄道12宮での位置を調べる。

アセンダントの上のライン(第1ハウスの始まりのラインの1つ上)が、第12ハウスの始まりであり、その上が第11ハウスの始まりである。

前述したように、第10ハウスの始まりは子午線である。

同様に、アセンダントと深夜線の間を3等分する。

これが、第2、第3ハウスの始めであり、第4ハウスの始めは深夜線である。

それぞれの天底が、反対側のハウスの始まりである。


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2-38.

あらゆる場所において、子午線を見つける

丸い金属板を用意する。歪みのないもので、なるべく大きなものがよい。

これに、コンパスのように目盛りをつける(同心円を描く)。

そして、この板を平らな地面や平らな石の上、地面と垂直な棒の上などに水平に置く。

コンパスの中心に、ピンや針金などを垂直規を使用して垂直に刺す。小さい方がよい。ピンの長さが円の直径の4分の1以上にならないように。

10時か11時頃、ピンの影が円に接したとき(円の中に入ろうとする時)、その点に印を付ける。

1時過ぎ、ピンの影が別の点で円に接する(円の中から出ようとする)のを待ち、再び印を付ける。

この2点間の中心を取り、ピンと中心点を通る線を引く。

これが、その地点の子午線である。

この線を延長したものが南線(深夜線)である。

そして、直角に交わる線を引けば、東と西を示す。

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2-39.

子午線や経度及び緯度、都市の地域(緯度)の説明

*天の緯度・経度と地上の緯度・経度の説明

子午線とは想像上の線であり、世界の両極と観測地点の真上(天頂)を結んだ線である。

どの場所においても、またどの季節においても、太陽はこの線で最も高度が高くなる。その時が正午であり、子午線は正午線である。

そして、2つの都市において、一方がより東にある時(経度が異なるとき)、2つの都市はそれぞれに異なった子午線を持つ。

赤道と2つの子午線に囲まれた部分に含まれる、または線に接する都市が、その経度にある都市である。

もし2つの都市が、よく似た、あるいは同じ子午線を持つとき(同じ経度の時)、その都市は東から同じだけ離れている。逆も同じである。

しかし、(経度が同じでも)極の高さと太陽との距離が異なれば、違うアルムカンターを持つ。

地域の経度は、東から西へと赤道を等しく分けた想像上の線である。

地域の緯度は、地域の始めから終わりまで、地上における北極との距離が同じと言える。

何人かの著者は、緯度は天頂と赤道を結んだ子午線に含まれて(挟まれて)いるという。そして、赤道から地域の終わりまでの、北極方向に向かって測った距離が本当の地域の緯度だという。

*当時、代表的な都市の緯度±3度くらいのエリアを同じ緯度として「地域の緯度」と呼んでいたようだ。


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2-40.

緯度の南北に関わらず、ある惑星がどの黄道12宮と一緒に昇るかを調べる

天体暦で、惑星が黄道12宮のどの位置にあるか確認する。

また、天体暦によって赤道からの緯度や黄道からの経度も知ることが出来る。

このようにすれば黄道12宮のどの位置でも調べられるという例を示す。

例)金星(または他の惑星)の経度は山羊座の1度であり、緯度は北緯4度であった。

精密なコンパスを用意し、片足をA 、もう片足をFとする。

Aを、金星の黄道の経度である山羊座1度に合わせる。

緯度が北緯4度のため、Fを山羊座1度より4度上に合わせる。

これで2つの点の間の距離、4度を測り取ったことになる。

コンパスをそっと置き、2つの印の値をはっきりと取る為に、ルールにワックス(蜜蝋など)をつけておく。

地平線に金星の経度(山羊座1度)を合わせ、ワックスをつけたルールを合わせる。コンパスを取り、Aをルールの地平線上にある山羊座1度の上に置く。

Fを、Aよりも黄道の内側、即ち黄道の北にルールの上に置く。

コンパスを置き、AとFの印がしっかりついているか確認する。

リートとルールを一緒に回し、Fを地平線に合わせる。

すると、金星は北緯4度の影響を受けて、山羊座の始めから反対側に8度(射手座22度?)で昇ることがわかった。

 

このようにして、すべての宮で惑星の昇る経度を調べることが出来る。

ただし、山羊座から南緯を持って昇る惑星の場合、アストロラーベ上に黄道と地平線の間のスペースがなく、操作を行えない為に調べることが出来ない。

それ以外の場合はすべて出来るはずだ。

例2)木星(または他の惑星)経度は魚座の1度であり、緯度は南緯2度であった。

精密なコンパスを用意し、片足をA 、もう片足をFとする。

Aを、木星の黄道の経度である魚座の1度に合わせる。

緯度が南緯2度のため、Fを魚座1度より2度下に合わせる。

これで2つの点の間の距離、2度を測り取ったことになる。

地平線に金星の経度(魚座1度)を合わせ、Aをルールの地平線上にある魚座1度の上に置く。

Fを、Aよりも黄道の外側、即ち黄道の南にルールの上に置く。

リートとルールを一緒に回し、Fを地平線に合わせる。

すると、金星は南緯2度の影響を受けて、魚座8度で昇ることがわかった。

先述したように、山羊座の南以外ではこのようにして調べることが出来る。

よく知られているが、月は刻々と移動し、同じ経度にわずかの間しか留まらない。

月の上昇にこの方法を用いる場合は、天体暦から毎時間ごとの正しい動きを、

*原文はここで終わっており、後に書き足されたと思われる「君には出来るだろう。」という文が続いている。

ここより先は、チョーサー以外の人物の手によって書き足された可能性が大きい。

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