九月に入る前、身体を不慮のアレでぶっ壊してしまい黄泉の国が見えそうになりました。
ああ、これ死ぬやつかなぁ、極楽浄土の入場料いくらかなぁ…毎年更新料とかあるのかな…極楽浄土ならアノマロカリスの霊と会えるかもなぁ..なら早く逝きたいかも…以下略、、って考えて(ません)たら治りました。
ひどい怪我や変な病、いったんふりかかると色んなことが滞ってしまうので、体は大事にね。
元気になったところで、作品作り再開
ちょっと手のかかりそうな作品に着手していたのですが、難航しそうだったので一旦休んでアクセサリーでも作ろうってなんとなく始めたお品。
あら不思議、ギアがフレームの中で浮いちゃってる。
一見ちょい不思議な存在感が耳元美く飾り心ひそかに小躍りしたら、この諸行無常で有限故の事象に翻弄される我々浮き世人、極楽浄土をちょっぴり見出せそう………
そんなお耳飾り。以上、書きながら考えた雑設定。
それなりに彫金ぽい工程なので、自分なりの制作過程や方法をエントリーしてみます。
工程の概要
スタイルとしては、最終的にエレガントな振り子時計のフレームを意識してディテールを構築しました。
それでは出来るまでの工程の概要。
- 平角棒から大枠となる内周20mm “A” と、振り子パーツ用の大体直径1cmのリング”B”をつくる。
- 1のリング”A”の外周を装飾するアラベスクパーツ、”B”とセットとなるの振り子支柱をデザインし、切り出す作業
- 工程1,2,で用意した部品などを接着&大枠と振り子支柱を留める為のネジパーツ制作(ろう付け作業)
- 不要部分の除去及び、研磨、穴開け。
- 歯車の組み込み(本記事では省略)
リングつくる
この作品。一時期、真鍮の平角棒でひたすらリングを作っていた残骸を見ながら
「この延長でなんが作りたくね?」
と、
「多めに持っていた小さい8mmほどのギア⚙で、なんか可愛いアクセサリー作れん???」
そんな思い巡らしをだらだら積み上げ、気づいたらこうなった産物でございます。
元々はこんな流れで全体像を作っておりました。
一晩経ってリプライ元の作品見たら物足りなかったので、もう少しパーツを作り足し、なんだか良さそうなものにして見ました。 pic.twitter.com/G6FbNqG3vC
— φ✧pHì✧ (@phi_stmpnks) September 1, 2017
あとリングをつくる画像撮ってなかったです。ごめんなさい
かいつまんで言うと、平角棒を焼きなましし – 芯棒で輪に成形した後に輪の接合部に合わせて切断 – ろう付け – 芯棒で叩いて平均化。
そんな感じです。
以前作った輪の画像を例にどうぞ。
ロウ目(接合部分)の処理が綺麗に出来て判別しづらくできたときは嬉しいです。
特に、一定のベロシティとリズムで丹念に叩き加工硬化という変化を経ると、質感的にもタイトでロウ目の形跡も最小限に抑えられた結果、気持ちのいい出来になる気がする経験則。
(※今回は数ある工程の手間とのバランスを考え、形を整える目的のみであまり叩いてません)
この様な具合で、20mmピッタリを目指したリングと、大体直径10mmの振り子用リングを先ず作ります。
切り出しパーツの作成
枠の外周に添える装飾パーツと、振り子支柱を真鍮板の面から取り出す作業です。
パソコンで図案を書いてリングの寸法に合わせた画像を印刷し、真鍮板にはりつけ。
そうしたら、持ちスキル" 何 も 考 え て な い かも 〜 ぉ “を発揮しながらすり板の上で弓ノコ装備して切ります。
このアラベスク装飾、黄金比の対数螺旋カーブを組み合わせて出来てます。
コピペしたり貼ったりグリングリン回したり縮めて貼って貼ってコピペして。そういうやつ。
そして、振り子支柱。これも黄金比のカーブを組み合わせてそれっぽく。
かなり小さい図柄なので太めの刃を使うと切らない部分も巻き込みそう。
なので、糸鋸の番手は最細の#8/0。メーカーはスーパーパイクです。
本当はね、こうガシャンって型でプレスして一瞬で出来たら楽なのにな..とかそういう煩悩で取り組む。
そして、デザインするときはいつも切ることを考えなしに、無茶な寸法にしてしまう。理想形優先。
部品のロウ付け
部品が揃ったら、それぞれ接着して一体化させてゆきます。割とプラモ感覚でやってます。
ではロウ付けです、火を使います。火属性術式の出番。
フラックス、銀ロウ、ガスバーナー、ブロックを用意。
こういった細かい作品だと、プリンスバーナーという炎が細く高出力な火器をつかいます。定番です。
これ、見た目がカッチョいいの…スマートだしびゅーてぃほー、でもどこかヤバそうな感じでそだがそれが良いいし致死量のレーザー吐きそうだし実際何人かやってそうだし。
…
はいつぎ。
母材の体積が大きな場合はホームセンターで買った炎が太いバーナーを使いますが、今回みたいなちっこい工作に使うと間違いなくパーツ溶けて台無しです。
あとね、料理で炙るのによく使う。肉とか炙るとスペクタクル。
↑こういうの。音がジェット噴射みたいで派手。
ゴーォォォって。
今回は接着面積が微妙なので、銀ロウを針のように細く切って挿しロウスタイル。
銀ロウは7分と5分を使い分けます。
フラックス、以前は代替として水ときホウ砂を使っていましたが使いづらくて使いづらくて心の隙間にに産毛生えそうだったので心身とも健やかさの為、定評のあるこれを選択。
ブルーフラックス。
とにかく特に細かい部分へのロウ付けがスムーズでストレスフリーになりました。
以下今回のセッティングの例です。
フラックスはごく少量。
べったり付けるとロウが広がって台無し。
この状態でバーナーで熱してゆきますが、火炎の角度と真鍮材が熱くなって修造してるかを感じ取らないとロウが直火焼きになり変なタイミングで溶けます。
なので、灼熱に登り詰めるパーツと会話しながら、そうっと…。
あとは、ネジの通し穴及びカンになる細パイプの断片を末端につけたりして完了。
ついでに、ネジパーツも作ります。M2サイズの真鍮ネジ。
炎と部品との距離感気をつけないと溶けて崩れて台無し。まるで人間関係。
あとは、必要なところ(ロウを流したい接着面)以外は極力フラックスを塗らないことを心がけてます。
フラックス、それは火炎を浴びせると酸化皮膜が生じるのを防ぐおまじない。
ろう付け直後は被膜まみれでボロボロなので、次項の研磨作業で浄化の儀を執り行います。
研磨及び、不要部分の除去
ロウ付け直後は希酸にさらしており、引き上げたらルーターの金属ブラシのポイントで被膜をはがします。
真鍮はロウ付けする際、うっかり必要以上の高温に熱してしまったりすると亜鉛が析出して黒っぽくなっていたり赤い酸化膜がしつこくこびりついているので、まずはこの工程でしっかり落として黄銅色を取り戻しています。
あと、この金属ブラシは高回転の遠心力で抜けてサボテンダーの攻撃みたいな状況が待っているので、水を張った容器の中で行っています。
グローブボックスとかあるといいんだけど。
そしたら、ロールサンダーで磨き始めて、過去記事のバングル研磨と同様のやり方でピカピカにします。
それと、細かい隙間の多い作品ですので、3M ラジアル・ブリッスルディスクという研磨剤を混ぜた柔軟性のあるディスクブラシも使います。
そうして研磨完了。
ネジを通す部分とカンは元々パイプなので、余分に長い部分を切り取る。
それと、振り子部分の輪の中に天然石をシャフトを通して仕込むため底部を穴あけ。
そうして真鍮フレーム部は出来上がりです。
この新作は、来る10/8〜9にラフォーレ原宿ミュージアムで開催の「ハンターズフェア2017」にて御披露目になります。